パッケージが「対応できる」業務と、「対応しきれない」業務
業務システムには、大きく分けて2つの領域があります。
一つは、どの会社にも共通する業務です。勤怠管理、給与計算、会計。これらは法律や制度で枠組みが決まっており、会社ごとの違いが小さいため、パッケージやSaaSがよく合います。すでに完成度の高い製品が数多くあり、わざわざ独自に作る理由はほとんどありません。
もう一つが、御社だけのコア業務です。受注から生産・施工・納品までの流れ、独自の見積りロジック、取引先ごとの商習慣、現場が長年磨いてきた段取り。ここは会社ごとに形が全く違い、その違いこそが競争力の源泉になっています。
問題は、この2つ目の領域です。パッケージは「多くの会社の最大公約数」で設計されているため、御社固有の業務には、どうしても対応しきれない部分が残ります。
業務をパッケージに合わせ続けると、何が起きるか
パッケージが業務に合わないとき、選択肢は2つしかありません。「パッケージをカスタマイズする」か、「業務の方をパッケージに合わせる」かです。そして、どちらの道にも落とし穴があります。
カスタマイズを重ねると、費用がかさむだけでなく、パッケージ本体のバージョンアップに追従できなくなっていきます。改修のたびに影響範囲の調査が必要になり、やがて「触るのが怖いシステム」になります。
一方、業務の方を合わせると、今度は御社の強みが削られていきます。パッケージの標準機能でできる範囲に業務を丸めるということは、他社と同じやり方に近づけるということだからです。さらに、システムでカバーしきれない部分はExcelや紙による運用が周辺に増えていき、二重入力や転記ミスの温床になります。
加えて見落とされがちなのが、製品側の都合に振り回されるリスクです。ライセンス体系の変更、サポート終了(EOL)、値上げ。パッケージに深く依存するほど、これらの影響は大きくなります(後述しますが、実際に「ライセンス終了まで7か月」という状況からの刷新をご支援した実績があります)。
POINT 共通業務はパッケージでいい。しかし、売上を左右するコア業務まで既製品に合わせ続けると、競争力そのものが削られていく。
フルスクラッチという選択肢——「ゼロから全部」は誤解
そこで選択肢になるのが、コア業務に合わせてシステムを一から設計するフルスクラッチ開発です。システムに業務を合わせるのではなく、業務にシステムを合わせる。御社の強みを、削らずにそのままシステムに載せるアプローチです。
ただ、「フルスクラッチ」と聞くと、多くの方がこうイメージされます。「何もないところから、全てを手作りするのだから、高くて、時間がかかって、品質も不安定なのでは」——。
これは誤解です。フルスクラッチといっても、実際にゼロから作るわけではありません。
共通機能は「ひな型」がある——Fit&Gapするだけ
ログイン機能、2段階認証、権限管理、マスタ管理。こうした「どのようなシステムを作る場合にも必要となる機能」は、いわばパッケージのようなものです。当社にはこれらのひな型がすでに揃っており、御社の好みやセキュリティ要件に合わせてFit&Gap(適合確認と調整)するだけで済みます。
ゼロから作るのは、御社のコア業務に固有の部分だけ。フルスクラッチの工数もリスクも、皆さんが想像されるよりずっと小さく収まります。
開発プロセス自体が「標準化」されている
作り方も、案件のたびに手探りで進めるわけではありません。当社では、次のような仕組みを開発プロセスに組み込んでいます。
- 設計書ドキュメントの標準化 —— 案件ごとに書式がぶれず、誰が読んでも同じ精度で伝わる設計書
- ツールによる品質チェック —— 人の目だけに頼らず、機械的なチェックで品質を担保
- テストのノウハウと自動化 —— 蓄積されたテスト設計の知見と、自動化による確実な検証
「一点物だから品質が読めない」のではなく、一点物を、標準化されたプロセスで作る。これがフルスクラッチの品質を支える土台です。
シンプルから超複雑まで——実績そのものが「ひな型」になる
さらに、当社にはシンプルな機能から超複雑な機能まで、様々な開発実績があります。これらの実績は単なる過去の話ではなく、次の案件の「ひな型」としてご提案できる資産です。
「御社のこの業務には、過去のこういう作りが近い」——そう具体的に示せることが、要件定義のスピードと精度を大きく引き上げます。これが、実績を積み重ねてきた当社の強みです。
KEY MESSAGE フルスクラッチ=ゼロから、ではない。共通機能のひな型、標準化されたプロセス、実績のひな型化。「一から作るのは、御社のコア業務だけ」が実際の姿。
刷新の実績——2つのユニークなケース
「では実際に、いまのシステムからどう乗り換えるのか」。ここが最も気になるところだと思います。当社には、自社開発システムをフルスクラッチで刷新した実績も、既存パッケージをフルスクラッチで刷新した実績も、どちらもあります。それぞれ特徴的なケースをご紹介します。
ケース1:既存のテーブルとデータを「そのまま活かして」刷新
長年使ってきた自社開発システムの刷新にあたり、お客様のご要望は「既存システムのテーブルやデータは、そのまま活かして、新規システムにしてほしい」というものでした。蓄積されたデータは業務の歴史そのものであり、移行リスクも抑えたい——当社はこの要望にお応えし、既存のデータ構造を土台にした新システムを構築しました。
フルスクラッチだからといって、全てを白紙に戻す必要はありません。流用できる資産はそのまま流用する。この柔軟さも、既製品にはないフルスクラッチの利点です。
ケース2:ライセンス終了まで7か月。70機能を期限内にリリース
既存パッケージのライセンスが7か月後に終了することが判明し、急遽の刷新依頼をいただいたケースです。必要な70機能(画面・帳票など)を、3か月かけて要件定義し、残る4か月で設計・開発・テストを実施。無事、期限内にリリースしました。
注目していただきたいのは、7か月という短期案件にもかかわらず、全体のほぼ半分を要件定義に割り当てた点です。「急いでいるのだから、まず作り始めよう」と見切り発車していたら、途中で仕様の齟齬が噴き出し、作り直しの連鎖で期限を守れなかったでしょう。
急がば回れ。要件定義にしっかり時間を使い、見切り発車で設計や開発を進めないこと。これこそが、手戻りを無くし、結果として最速でシステムを開発する一つの答えです。
パッケージとフルスクラッチ、使い分けの目安
誤解のないようにお伝えすると、私たちは「何でもフルスクラッチにすべき」とは考えていません。使い分けの目安は明快です。
| 観点 | パッケージ / SaaS | フルスクラッチ |
|---|---|---|
| 向いている業務 | 勤怠・給与・会計など、どの会社にも共通する業務 | 売上を左右する、御社だけのコア業務 |
| 業務との関係 | 業務をシステムに合わせる | システムを業務に合わせる |
| 競争力への影響 | 他社と同じやり方に近づく | 御社の強みをそのままシステムに載せる |
| 外部要因のリスク | ライセンス変更・サポート終了・値上げの影響を受ける | 製品都合に振り回されない |
| 長期の拡張 | 標準機能とカスタマイズの制約内 | 育てることを前提に設計できる |
共通業務はパッケージ、コア業務はフルスクラッチ。この切り分け自体のご相談から、お受けしています。
作ったあとも「育ち続ける」根拠
フルスクラッチのもう一つの価値は、リリース後にあります。ある内装業者様の事例では、2014年に45機能でリリースしたシステムが、10数年をかけて450機能以上へと拡張されました。その間、作り直し(再開発)はゼロ。最初の土台を堅実に作ったからこそ、業務の変化に合わせて足し続けられるのです。
また、ある食品会社様では、運用5年で要件定義の不備ゼロ・設計書の不備ゼロを維持しています。曖昧さを残さない要件定義と、整合性の取れた設計。地味ですが、これが「作り直しのない、育ち続けるシステム」の正体です。
よくあるご質問
Q.フルスクラッチは、本当にゼロから全て作るのですか?+
Q.既存システムのデータを引き継いだまま刷新できますか?+
Q.パッケージのサポート終了が迫っています。短期間で間に合いますか?+
Q.パッケージとフルスクラッチは、どう使い分ければよいですか?+
まとめ:コア業務は、御社の形のままシステムに
共通業務はパッケージで効率化し、コア業務は御社の形に合わせて作る。そしてフルスクラッチは、ゼロからの手作りではなく、ひな型と標準化されたプロセスの上に、御社固有の部分だけを丁寧に作るアプローチです。
既存のデータ資産を活かした刷新も、期限が迫った状況からの刷新も、実績があります。「うちの業務はパッケージに合わないのでは」と感じ始めたら、それはコア業務がパッケージの器を超えたサインかもしれません。まずは、フルスクラッチが適しているかどうかの切り分けから、率直にお話しします。